一面的な思考と多面的な思考の違い
かつて「経営の常識」とされたことが軒並み効力を失っています。正社員を減らし、非正規社員を増やすのは固定費削減の王道でした。下請け企業をたたいて価格を下げさせることは、下請けの競争力向上につながると正当化していました。誰かを犠牲にしても、会社の売り上げが伸びていれば評価が得られた時代はとうに終わっています。人口減少時代にこうした一面的な思考を続けていると社員の定着率は下がり、取引先は離れていきます。すべてのステークホルダーが喜ぶ経営を実現するには、社長の多面思考が土台になります。
利己と利他を両方追求する
すべてのステークホルダーを幸せにする経営は自己犠牲を求めてはいません。「大欲は無欲に似たり」と言われるように、ステークホルダーと共に何かを成し遂げんと大きな利己を持つ社長は利他的な行動に向かい、結果として己に大きな利益をもたらします。多面思考の根幹には社長の高邁なエネルギーが不可欠です。自己利益だけを追う「小さな利己」と「大きな利己」の線引きはどこにあるのか。その区別を認識し、利己と利他を両立している経営者の考え方に触れる機会を増やしましょう。
「正のスパイラル」に転換する
バブル崩壊後の「失われた30年」は「目先の利益追求➡コスト削減➡人的資本毀損・取引先弱体化➡事業創造力低下➡経営者のモチベーション下降」という負のスパイラルに陥っていました。これでは誰も幸せになりません。「長期の利益追求➡価格抵抗力のある商品開発➡人的資本強化・取引先と共生➡事業創造力向上➡経営者のモチベーション上昇」という正のスパイラルへの転換が急務です。あまり知られていませんが、社長の意欲低下が原因で会社を破綻させる例は珍しくありません。多面思考は社長自身の心の健康にもつながります。