サイエンスとアートの違い
経営手法はそれぞれの社長によって異なるのが自然な姿です。しかしこれまで、経営の正解は一つという誤解が少なからずありました。経営に原理原則はありますが、やり方は千差万別です。自分は何を大切にしているのか。どのようなことに喜びを見いだす人間なのか。内発的な動機や個人的な感性によって自分に適した経営手法を探しましょう。倒産企業の調査分析をしていると分かりますが、経営破綻の原因は究極的には一つの失敗に起因します。いうなればサイエンスで説明できる世界です。一方、企業の発展型は無限にあり、複数の要素が絡み合います。それは、社長自身の個性で自由に組み立てるアートの領域です。その違いを理解することが社長には極めて重要です。
後継者に合う経営は先代と異なる
後継者が先代社長を意識しすぎると経営がぎこちなくなり、会社を傾かせることはよくあります。その原因は、先代が構築した経営スタイルをそのまま継承しようとするからです。たとえ親子であっても内発的動機は異なるため、後継者は自身の内面に合った経営に作り替える、別の言い方をすれば、絵を描き直す作業が必要です。その工程を踏まないと経営に対する情熱が次第に低下し、やるべき戦略戦術が徹底できなかったり、社員が付いてきてくれなくなったりします。もちろん創業精神のように世代交代しても守るべきものはありますが、それと経営手法は別。先代のやり方に合わせるのではなく、自分のほうに引き寄せるという考え方が大切です。
被害者意識がもたらす罪
会社を破綻させてしまったり、その一歩手前まで追い詰められたりした社長に数多く会ってきました。共通していたのは「被害者意識」です。「自分はこんなに努力しているのに、どうして現場は一生懸命に働かないのか」といった被害者意識が首をもたげ、経営判断を誤るのです。これは大企業のたたき上げの社長にも見られます。「社員みんなのために社長をしている」という意識が強いため、自分の個性を生かした経営をすることに二の足を踏むのです。「みんなのために社長をしている」は、「社長をしてやっている」という被害者意識と紙一重です。まずは、あなた自身のために会社を経営してください。それは利己的精神とは全く異なります。自身の内面と深く向き合うことが社長力を高めるのです。