長期戦略と長期思考の違い
ある外食チェーンは「増収減益」「減収増益」を3年ごとに繰り返していました。原因は3年の中期経営計画を作成していたからです。新規出店を増やし売り上げは増やせても、減価償却費がかさんで増収減益。しばらくすると利益率の低さが問題視され始め、出店ペースを抑えて不採算店も閉めるため減収増益。3年先しか見ていないため、この繰り返しを延々と続けていたのです。最近、中計を廃止する会社が増えているのは、計画達成に拘泥することが企業体力を奪うと気づいたからです。計画を立てることは正しいのですが、中長期の戦略を立てたからといって、中長期の思考で会社が動くわけではありません。戦略・計画とは別次元にある社長の考え方が組織の時間軸を左右するのです。
短期収益と長期収益は両立するのか
短期収益を追っていれば企業は成長し続けられるという考え方は、人口増加によって未来の道筋が見通しやすかった高度成長時代の残骸です。本来は長期計画を立て、それを短期計画に落とし込むという順序が正しい。長期計画と短期計画を結びつけないと、人は目の前の短期収益を確保することばかりを考えます。長期収益と短期収益を天びんにかけなければいけないときは、社長が「短期収益の優先順位は下げていい」と覚悟を示し、未来に社員の目を向けさせるのです。ただ、目先の収益を“捨てる”ことは誰しも怖い。その怖さを和らげるための方法を当研究所では探求しています。恐怖を克服し、「何をやらないか」を決断できるのは社長だけです。
ビジョンと長期思考は違うのか
自社の存在意義を社員と共に議論したり、ビジョンやミッションを皆で策定したりすることは大切です。ただ、せっかく定めたビジョンがお題目になっている会社は山ほどあります。その原因は「こういう会社でありたいよね」という希望・願望の域にとどまっているからです。必要なのは、ワンフレーズの標語ではなく、長期思考に基づいた「ナラティブ(物語)」に落とし込むこと。社長としてこれからどんなことを実現していくのか。世の中にどんな価値を生み出していくのか。その物語性が社内外の人を魅了するのです。名経営者の成功譚を読むと分かりますが、多くが初期に壮大なストーリーを描いています。その共通性をしっかり理解しましょう。
・事例を通し、長期思考と短期思考、長期思考と長期戦略の違いを知る
・長期思考を固めるために有効なナラティブ(物語)の描き方を学ぶ